心をケアすること~ウクライナでの心理社会ケア活動~ 

 「一人で考えなくていい」 

 これは、今年に入り私が人生で初めて受け始めたカウンセリングでかけられた言葉です。心がふっと軽くなり、救われた気持ちになったことを覚えています。自分ではうまく言葉にできない気持ちも含め、カウンセラーの方に全てを聞いて、受け止めてもらう過程で、初めて自分の気持ちときちんと向き合うということを学びました。 

フロントライン(前線)に近い自宅で物資支援を待っていた女性(2024年3月、スーミ ) 
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以前、ウクライナの現地スタッフに裨益者とのやり取りについて聞いた折、「彼らに聞く必要はないんです。彼らの目を見れば、そこにある悲しさが伝わり、彼らが経験してきたことが伝わってくるんです」と言われたことがありました。(オンラインミーティングで現地の様子を語る ADRAウクライナプロジェクトマネージャーのローマン【ウクライナ人道支援】)このウクライナ戦争で人々が負った心の傷はどれほどか…不安や恐怖、絶望。これらと向き合おうとすればするほど心がえぐられます。私たちが行う心理社会ケアでは、そんな人々が1歩ずつ前に進むプロセスを、専門資格を持つカウンセラーがお手伝いしています。 

オンライングループセッションの様子(2024年8月)

 個別カウンセリングでは、相談を希望する申込者の現状を把握するための簡単な電話面談を行い、政府認定の心理テストを受けます。そこでの評価診断に沿って、適切なカウンセラーの担当者を決定します。カウンセリングはその人の必要に応じた回数実施が可能で、専門的な支援が必要と診断された場合には、精神科医への紹介まで行います。またグループカウンセリングでは、同じ悩みを抱える5~10人の参加者がオンラインで集まり、専門カウンセラーのファシリテーションの下、お互いの経験を共有したり、セルフケアの方法を学ぶなどの活動があります。さらに、こうした支援を受けやすくするため、現在は各地域の行政職員などを対象に心理的応急処置などの研修も行っています。このトレーニングにより、支援が必要な人々への活動案内や、オンライン操作が難しい人々へのサポート等を適切なコミュニケーションを通じて行うことができる人材が養成されています。 

 これまでADRAでは、ウクライナ危機発生以来、5万人を超える人々に心理社会ケアの支援を届けてきました。心のケアでは、1度のカウンセリングですべてが解決することはなかなかありません。継続した支援を届ける体制を築いていく必要があります。心に小さな希望を取り戻した人々が、ウクライナの社会と未来を支えていけるように。そんな願いを持って、私たちはこの活動を続けています。 

心理社会ケア支援の活動に参加した子どもたち(2025年4月、ヴィ―ンヌィツァ) 

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(文責:高橋睦美) 

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