
ウクライナ事業担当の細見です。日頃よりADRAの活動をあたたかく見守っていただき、ありがとうございます。昨年8月、ウクライナの新一年生を中心に教育キットを配付しました。かつて小学校教員として子どもたちと向き合っていた経験と重ねながら、今回の取り組みについてご報告いたします。

6年前、私は小学校教員として働き、初めて担任を持ったのは1年生だった。ちょうどコロナが流行し始め、緊急事態宣言が出されるのではと噂された4月初旬、私たちは感染予防のため、開校以来初めて、外で入学式を執り行った。しかし、その翌日から子どもたちは学校に来ることは許されず、自宅での学習を余儀なくされた。
当時保育園で働いていた母は、春が近づくと、「年長さんたち、小学生になるん楽しみにしてるで。新しいランドセルを買ってもらった話とか、よぅ保育園でしてるわ」と私に言ってくれた。自宅の鏡の前でランドセルを背負い、嬉しそうにしている子どもたちの様子や、細かい算数セットのおはじき一枚一枚に名前を書き、小言をいいながらも楽しみにしているご両親の姿を想像し、私も入学式を待ち遠しく思っていた。そのため、到底想定しえなかったパンデミックにより学校が閉鎖されたことは、私や多くの子どもたちに、大きな落胆を及ぼした。
長丁場となる閉鎖期間を鑑み、全員オンラインでの学習から始まり、分散登校、ハイブリット授業(オンラインと対面を同時に授業する方法)と、様々な方法を駆使しながら、その状況に応じて対応をした。しかし、運よく状況が改善し、全員登校が可能となってもマスクの着用、一方向を向いた食事、大声禁止など、様々な生活の制限をかけざるを得なかった。特に一年生は、すぐに“鼻マスク”となったり、友達同士で密着したりしがちで、その都度注意しないといけないのは、心が痛かった。それでも、子どもたち全員が学校に集えた二学期、『あぁ、やっとこの日が来れたのか』と胸をなでおろしたのをよく覚えている。
ウクライナでは、「その日」が一向に来ていない。コロナの時期と合わせると、約6年間子どもたちは安心・安全に学校へ通うことができていない。それでも、我々がコロナ禍の時に様々な方法を駆使したように、ウクライナ人の学校職員もなんとか子どもたちの教育が滞らないよう、試行錯誤をしながらも学校を運営し続けている。
しかし、悩みの種は教育の提供方法だけではない。保護者の中には、戦争により失業し、家計が厳しい人がいる。入学に伴い、新しい文具セットや鞄、お弁当箱など学校で必要になる一式を自身の子どもに買ってあげたいけど、それが容易ではない。その葛藤や不甲斐なさにより、保護者の精神的負荷も深くかかっている。

ADRA Japanでは、この状況に少しでも光を差し伸べるべく、昨年8月、ウクライナの新しい学校年度が始まる前に、新一年生を中心に教育キットの配付を行った。また、支援物資の中にはADRAが行っている心理ケア支援の案内も同封し、保護者も子どももアクセスできるようにした。
支援を受け取った方の一人から「支援を受けられて、本当によかった。私一人では全て整えることは難しかったです。これで、子どもも勉強ができます」と感謝の言葉をを受け取った。
私は、戦争に全く関係のない子どもたちが、大人の都合によって教育の機会を奪われるのは断固として許せない。しかし、私には戦争を止め、状況を改善できる力もない。だから、たとえ小さな支えにしかならずとも、子どもたちが学校に通うのを待ち遠しく思う気持ちを潰さないようにしたいと思う。
文責:細見 真菜
