距離とサイレンを越えて、世界とつながる

あらゆるものがデジタル化される現代。オンラインでさまざまなサービスを利用できたり、遠く離れた人とも簡単につながれたりと、便利な世の中になったと感じる人は少なくありません。

その一方で、デジタル化が進む社会の中で、必要な情報やサービスにアクセスしづらさを感じたり、人とのつながりが薄れて孤独を感じたりする人たちもいます。

戦争が続くウクライナでは、この問題はさらに深刻です。家族や友人と離ればなれになり、不安定な生活を送る中で、デジタル技術を使いこなせるかどうかは、情報へのアクセスや大切な人とのつながりを維持するための重要な鍵となっています。

ウクライナ東部の都市ハルキウに暮らす56歳のオレナさんも、デジタル化が進む社会の中で孤独や不安を感じていた一人です。

戦争によって子どもたちは国外へ避難しましたが、オレナさん夫妻は故郷に残ることを選びました。空襲警報が日常の一部となった街で暮らし続ける中、彼女が直面した最も大きな課題は「孤独」でした。

「子どもたちは海外へ行ってしまいましたが、私たちはここに残りました。それでも前を向き、生活を続けています」

オレナさんはそう語ります。

しかし、世界が急速にデジタル化する中、スマートフォンを手にしながらも使い方が分からず、不安や戸惑いを感じることが少なくありませんでした。

そんなオレナさんが一歩を踏み出したのが、ADRAのデジタル・リテラシー講座への参加です。

これまで難しく感じていたオンラインバンキングや情報検索、メッセージアプリの設定などが、少しずつ理解できるようになりました。講座は単に知識を学ぶ場ではなく、離れて暮らす家族とのつながりを取り戻す重要な機会になりました。

また、講座には同じような悩みを抱える仲間が集まっており、互いに支え合える温かなコミュニティも生まれています。

「なんとなく分かっているつもりでも、実際にはできないことがたくさんありました。でも今ではしっかり身につきました。とても良い仲間にも出会えて、お互いに助け合っています」

とオレナさんは笑顔で話します。

この取り組みを通じて得られたのは、デジタル技術の知識だけではありません。自分で情報を得て、必要な手続きを行い、家族や社会とつながることができるという自信です。

前線に近い都市で暮らしながらも、オレナさんは今日も世界とのつながりを保ち続けています。距離やサイレンに隔てられていても、人との絆や学びの機会は、未来への希望を支える大切な力となっています。

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