【ウクライナ】戦火を越えて胸に残る「空を彩った夢」――12歳の少年デニスくんの思い出

戦争は、子どもたちから当たり前の日常を奪ってしまいます。

ウクライナ北部チェルニヒウ州の小さな村シェボルタシウカに暮らす12歳の少年、デニス・クリヴォルンコくんもその一人です。

彼は幼いながらも、多くの大人が一生かかっても経験しないような苦難を乗り越えてきました。

戦争によって変わってしまった日常

デニスくんの故郷は、ロシアとの国境近くにあるチェルニーヒウ州フレミャチ村。戦争が始まると、家族は住み慣れた故郷を離れざるを得なくなりました。

その後、追い打ちをかけるように、母親、そして父親を相次いで亡くすという大きな悲しみが彼を襲います。

現在、デニスくんはお姉さんとともにシェボルタシウカ村で祖父母のもとに身を寄せながら暮らしています。

彼にとって、戦争や両親との別れは、それまでの人生を一変させる出来事でした。

それでも、戦争前の楽しかった思い出は今も鮮明に心に残っています。

友だちとボール遊びをしたこと…。
木の上に秘密基地を作ったこと…。

何気ない毎日が、今ではかけがえのない宝物となっています。

忘れられない7歳の誕生日

その中でも、デニスくんには忘れられない特別な思い出があります。

それは7歳の誕生日の夜のことでした。

彼はいつも「本物の花火を見てみたい」と夢見ていました。その願いを知っていたお父さんは、近所の人と協力し、真夜中にサプライズを用意していたのです。

「お父さんが『外へ出てごらん』と言いました。そしたら、青、黄色、オレンジ、赤、白の花火が夜空に広がって… すごく嬉しかった。本当に綺麗で、一生忘れられない贈り物になりました。」

デニスくんのために、お父さんが近所の人にお願いをし、夜中の12時を過ぎてお誕生日になった瞬間に花火を打ち上げてくれたのです。

デニスくんにとって、その花火は単なる誕生日プレゼントではありません。それは、ご両親の愛情と、平和だった子ども時代を象徴する大切な記憶です。

今の支えは愛猫クージャ

現在、デニスくんの心を支えている存在がいます。

それは愛猫のクージャです。

クージャは故郷から一緒に連れてきた小さな子猫でした。今ではすっかり大きく成長し、少し甘えん坊になったそうです。

つらい日々の中でも、クージャは毎日デニスくんに笑顔を届けてくれています。

子どもたちの未来を支える活動 ―「ADRA Kids」プロジェクト

デニスくんのように、戦争によって大切な人や日常を失った子どもたちは少なくありません。

そうした子どもたちを支援しているのが、「ADRA Kids」プロジェクトです。

この活動では、戦争の影響を受けた子どもたちに心理的なサポートを提供し、深い悲しみや喪失感を少しずつ乗り越えられるよう支援しています。

子どもたちが笑顔を取り戻し、再び未来を描けるように。

ADRA Kids はそのための手を差し伸べ続けています。

デニスくんがいつの日か、爆発音ではなく、再び平和な空に咲く花火を見上げられる日が訪れますように。

Photos: ©2026ADRA|ADRA Ukraine