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こんにちは、ADRAの永井温子です。
7日間のスロバキア出張記、第5日目をお届けします。この日、ケジュマロクの避難民センターで、一人の男性から受けた問いかけが、私の心に深く残っています。
センターに集まっていた一部の方と一つのテーブルに座り、日本のことやADRAの活動について説明していたときです。ADRAがウクライナ国内にも食料や暖房のための燃料を届けていることを紹介すると、目の前の男性の表情が変わりました。そして、不安げな、なにか恐ろしいものを見たような目で、次の質問を発しました。
通訳をしてくれるスタッフの言葉を待たなければ、質問の内容はわかりません。けれども、男性の言葉に、一緒に座っている皆さんの空気が張り詰めたのを感じました。
彼の質問の内容はこうでした。
「戦争は怖いだろう。その怖さを、あなたはどうやって乗り越えているんだ?」
私は、質問の意味を理解したことを伝えるために、ゆっくりうなずきました。うなずきながら、答えとして言うべき言葉を探します。
取り繕うことはできない、まっすぐに答えようと決めて、感情を一つひとつ口にしました。
「私自身は、戦争を体験したことはありません。ウクライナにも行ったことがありません。だからその怖さは、知らないんです。ただ、その恐怖の中にいる人のためにできることがあればしたい、という気持ちで今日まで活動してきました」
テーブルにいる皆さんの真剣な視線を感じます。まるで「帰れる一筋の希望」を私の言葉に探しているようでした。話し終わったとき、横にいたおばあさんの目から、静かに涙がこぼれました。私の答えは、彼らが期待したものではなかったのかもしれません。それでも、少し顔を明るくして、彼ら自身もわずかでも寄付をしたり、物資を送ったりしていることを話してくれました。
ほどなく始まったウクライナ式のビンゴ大会では、この男性が「ビンゴマスター」として会場を仕切っていました。数字が書かれた駒を袋から取り出し、「何番!」と力強い声で番号を読み上げます。戦争の怖さを口にした彼と同じ人だとは思えないほど、その場を明るく盛り上げていました。そして帰る頃には、全員が笑顔でした。
たとえ短い時間でも、あのビンゴ大会が現実の影を少しの間忘れさせ、楽しく笑いあえる瞬間を生み出していたことに、言葉にできないほどの価値を感じました。
雪がちらつく中、足取りは軽い
次回のブログでは、二人の男の子とお父さんが教えてくれた、ある家族の姿をお伝えします。
またお読みいただけたら嬉しいです。
ADRA Japan 永井温子
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