
ミャンマーでは2021年以降の国内紛争の影響により、多くの方が住み慣れた家や仕事を離れ、国内避難民となりました。十分な荷物を持ち出せないまま避難し、日々の暮らしや健康を脅かされている人々もいます。
ADRAは2022年以降、現地コミュニティと連携し、生活の立て直しを目指す住民の方々に寄り添った支援を届けました。2026年3月からは、(前事業に引き続き) (特活)ジャパン・プラットフォーム(JPF)からの助成金により、衛生環境の改善、ジェンダーに基づく暴力(GBV)の防止、心の健康(MHPSS)に関する支援を実施しました。今回は、活動に参加した住民の声を通じて、地域で生まれた変化をご紹介します。
悩みを一人で抱え込まず、家族や信頼できる人に相談できるように
紛争の影響を受けた、延べ1600世帯の住民を対象に、衛生、GBV防止、心の健康に関する講習会を実施しました。講習会では、健康に関する知識を伝えるとともに、日々の生活の中で実践できる衛生・健康習慣の改善を促しました。
3人の娘を持つ52歳の女性は、講習会に参加する前と後の変化について、次のように話しています。
「講習を受ける前は、多くの避難民がジェンダーに基づく暴力(GBV)やメンタルヘルスの問題をほとんど認識しておらず、たいてい自分の悩みを胸に秘めていました。しかし今では、家族や信頼できる人に支援を求めて良いのだと思っています。」
また、母親としての気づきについても、こう語ってくれました。
「3人の娘を持つ母親として、心の健康や家族とのコミュニケーションについてより理解できるようになりました。メンタルヘルスとGBVの講習会で得た知識を娘たちにも伝え、彼女たちが自分の悩みを率直に話し合えるよう促しています。」
同様の声は多くの裨益者から届いています。ストレスを感じたとき、落ち着いて家族と話し合い、子どもと過ごす時間を大切にできるようになったと話す人もいます。
ゴミの散乱や不快な臭いが減り、清潔な生活環境へ
避難生活を送る家庭には、石鹸などの日用品を含む衛生用品を提供しました。8人家族の53才の女性は、支援によって家計の負担が軽減されたと話しています。
「8人家族では、石鹸などはすぐに使い切ってしまうため、ADRAから提供された衛生用品のおかげで、その分のお金を食料、学用品、薬、交通費などに充てられました。」
衛生用品の提供に加え、地域の共有スペースを清潔に保つため、ゴミ箱や清掃用具なども設置しました。これらの支援について、住民からは次のような声が寄せられています。
「多くの家族が密集して暮らしているため、ゴミはすぐに溜まってしまいます。清掃用具のおかげで、共有エリアをより清潔に保ち、 不快な臭いを軽減できています。」
32歳の女性も、ゴミ箱の設置による変化について、次のように話しています。
「ゴミ箱が設置される前は、キャンプの至る所にゴミが散らばっていることがよくありました。また、一部の世帯が空き地にゴミを捨てていました。しかし今では、指定された場所にゴミが集められています。」
家庭への衛生用品の提供と地域の清掃環境の整備を組み合わせることで、日々の衛生を守るだけでなく、住民が共有スペースを清潔に保つための環境づくりにもつながっています。

地域の健康推進委員会が、住民と必要なサービスをつなぐ
さらに、今回のプロジェクトでは住民の健康を地域で支える仕組みづくりにも取り組みました。地域に健康推進委員会を設立・再編し、住民への情報共有や啓発活動を進め、また、地域だけでは対応が難しい場合に専門機関のサービスにつなげられる体制づくりを支援しました。
32才女性は健康推進委員会の活動について、次のように話しています。
「健康推進委員会のメンバーが情報共有、地域社会の動員、健康関連の活動を支援しているのを見かけました。委員会の取り組みは、地域社会の意識向上やサービスへのアクセス改善に役立っています。」 住民が健康に関する情報を得るだけでなく、必要な支援やサービスにつながることも、安心して暮らすための大切な要素です。地域の中に相談や支援につながる仕組みを整えることは、事業終了後も住民が互いに支え合い、健康を守っていくための基盤となります。

今回の事業では、講習会を通じた健康に関する知識の普及、衛生用品の提供や清掃環境の整備、そして地域の健康推進委員会を通じた支援体制づくりに取り組みました。
住民の声からは、学んだ知識を家族に伝え地域の清潔さを保つことに加え、暴力を受けたり目撃したりした際に相談できるようになったなど、避難生活の中で安心して暮らすためのさまざまな変化が見えてきます。
避難してきた人々と、彼らを受け入れる地域の住民は、水場やトイレなどの限られた社会インフラを共有しながら生活しています。こうした環境の中で、共に啓発講習会に参加し、地域の清潔・衛生を保つ方法を学ぶことで、互いを尊重することができています。
今回の事業は、皆さまからの温かいご支援と、(特活)ジャパン・プラットフォームからの助成により実現しました。紛争の影響を受けた人々が、健康と尊厳を守りながら生活する一助となれたこと、心より感謝申し上げます。
