
能登半島地震から1年以上が過ぎた中で、地域の方がどのように支え合い、どんな力を発揮してきたのか。その姿がはっきりと見えたのが、先日穴水町で開かれた「在宅被災者訪問事業」の振り返りの会でした。

この「在宅被災者訪問事業」は、地震のあとも自宅で暮らし続ける住民の状況を把握し、必要な支援につなげるために行われたものです。今回の振り返りの会は、この事業で見えてきたことや成果を地域の方にお返しする報告の場でもあり、今後どのような支援ができるかを話し合う場でもありました。
平日の日中にもかかわらず、地域の方約50名が集まりました。それだけ、この事業のスローガンでもある「この町の誰ひとり取り残さない」という思いが地域に根付いているのだと感じました。
この事業は、「仮設住宅にいる人には支援が届くけれど、自宅で暮らす人は誰が支えるのか」という住民の声をきっかけに始まりました。昨年2月から8カ月間にわたり、町内2,119世帯を一軒ずつ訪問。地域福祉推進チーム、穴水町社会福祉協議会、そしてADRAを含む100名以上の外部支援者が力を合わせた大きな挑戦でした。

この事業の大きな特徴は、訪問に必ず地域の方が同行したことです。その存在が、住民の方の心を開く大きな鍵になりました。外部の私たちだけでは聞き取れなかった不安や困りごとが、玄関先で自然と語られていきました。聞かれる側にとっても、顔見知りの地域の方が一緒にいることで、本音を話しやすかったのだと思います。
「避難生活の中で主人を亡くしてから寝られなくなり、睡眠薬を飲んでいるんです」
こうした声を含め、訪問を通じて447世帯が健康・生活・心・孤立に関する困難を抱えていることが明らかになりました。そして、上がってきた声や課題を穴水町社会福祉協議会がきちんと受け止め、専門職やボランティア、地域福祉推進チームの協力を得ながら対応を進めてきました。今年3月時点で、237世帯の支援が完了しています。

振り返りの会で、ある地域福祉推進チームの方がこう話してくださいました。
「民生委員として地域の役に立てているのか不安でした。でも、この訪問活動に関わってから、住民の方が相談してくれるようになって。本当に嬉しかったんです」
その言葉には、訪問活動の大切な意味が表れているように思いました。ただ困りごとを調べるのではなく、地域住民の声を丁寧に聞き、その声に寄り添いながら支えていこうとする思いがあったからこそ、住民の方も安心して思いを打ち明けることができたのではないかと考えています。そして、その思いは一緒に訪問した地域の方にも伝わり、支える側の手応えにもつながっていったのだと。
その姿を見て、支援とは単に外から何かを届けることではなく、地域の中にある力を確かめ、育て、つないでいく営みなのだと改めて感じました。
地域の方が長年積み重ねてきた顔の見える関係性や、日々の暮らしの中で育まれてきたつながり。それは、外部支援者には決して代わることのできない、かけがえのない力です。
私たちADRAは、これからもその力を信じ、地域とともに歩みながら、被災された方々の暮らしが少しでも安心に近づくよう、丁寧に寄り添っていきます。
(国内事業課 大澤 明浩)
