
雨が降ると、中東の人々は「今日はいい天気」と言います。
乾燥地帯で降水量が少ないため、緑が芽吹き、気温も下がる雨の日は特別に嬉しいものです。
しかし、近年のイエメンでは、干害や洪水が頻発し、2015年から続く紛争と相まって、人々は極端な気象に悩まされてきました。
イエメンは農家従事者が国人口の半数以上を占めていましたが、灌漑設備の破損や井戸の枯渇、大雨による洪水で被害を受けても、高額な修繕費を捻出できず、農業を断念する人が後を絶ちません。 そこでADRAは、井戸の吸水ポンプ、エンジン、パイプなどの資機材を提供し、灌漑システムの復旧と農業再開に向けてのトレーニングを通じて、人々が自ら農業を再開できるよう支援しました。



今回の2つの事業地は、イエメン南部・ラヘジュ県のなかでも、とりわけ辺境地でした。ADRAが構えるイエメン南部の事務所から、それぞれ150km、220km先にあります。事業地に行く途中の道路は洪水でぬかるみ、閉鎖されて迂回する場所もあり、向かうだけでも難しい所でした。
このアクセスの悪さから、今回の事業対象となった地域は、これまで農業支援を受けてきたことがありませんでした。
しかし、これらの事業地は、本来は野菜、穀物、果物の栽培に適した土地を持っていました。井戸が修復されると、人々は農家を再開することが出来、安定した自律的な生活を取り戻すことが期待できます。


このように、イエメンでは、多くの農家が降雨を十分に活用できず、紛争、気候変動による豪雨や洪水で作物や土地が被害を受けてきました。灌漑用水路が機能しなくなると、洪水で農地が流されやすくなり、水が海に流れ出るため水不足が生じ、収穫減少も深刻になります。
他方、農業に適した土地であるため、灌漑設備の修復さえ叶えば、農業活動に復帰することが出来、貧困からの脱却が見込めます。
今後もADRAは、人々が自らの力で農業を再開し、安定した生活を取り戻せるようサポートしていきます。
この活動は、皆さまからご寄付と(特活)ジャパン・プラットフォームからの助成を受けて取り組んでいます。

執筆:イエメン事業担当 中西

