洪水や片道200km超の距離を乗り越えて

雨が降ると、中東の人々は「今日はいい天気」と言います。

乾燥地帯で降水量が少ないため、緑が芽吹き、気温も下がる雨の日は特別に嬉しいものです。

しかし、近年のイエメンでは、干害や洪水が頻発し、2015年から続く紛争と相まって、人々は極端な気象に悩まされてきました。

イエメンは農家従事者が国人口の半数以上を占めていましたが、灌漑設備の破損や井戸の枯渇、大雨による洪水で被害を受けても、高額な修繕費を捻出できず、農業を断念する人が後を絶ちません。 そこでADRAは、井戸の吸水ポンプ、エンジン、パイプなどの資機材を提供し、灌漑システムの復旧と農業再開に向けてのトレーニングを通じて、人々が自ら農業を再開できるよう支援しました。

2024年9月 住民の方々に資機材提供の様子
2024年11月 提供した吸水用の大きなパイプ
2025年3月 農業再開に向けてのトレーニングを受講する人々

今回の2つの事業地は、イエメン南部・ラヘジュ県のなかでも、とりわけ辺境地でした。ADRAが構えるイエメン南部の事務所から、それぞれ150km、220km先にあります。事業地に行く途中の道路は洪水でぬかるみ、閉鎖されて迂回する場所もあり、向かうだけでも難しい所でした。

このアクセスの悪さから、今回の事業対象となった地域は、これまで農業支援を受けてきたことがありませんでした。

しかし、これらの事業地は、本来は野菜、穀物、果物の栽培に適した土地を持っていました。井戸が修復されると、人々は農家を再開することが出来、安定した自律的な生活を取り戻すことが期待できます。

2024年12月 吸水用のエンジンを井戸の前に設置
2024年9月 井戸から水を汲み上げることに成功

このように、イエメンでは、多くの農家が降雨を十分に活用できず、紛争、気候変動による豪雨や洪水で作物や土地が被害を受けてきました。灌漑用水路が機能しなくなると、洪水で農地が流されやすくなり、水が海に流れ出るため水不足が生じ、収穫減少も深刻になります。

他方、農業に適した土地であるため、灌漑設備の修復さえ叶えば、農業活動に復帰することが出来、貧困からの脱却が見込めます。

今後もADRAは、人々が自らの力で農業を再開し、安定した生活を取り戻せるようサポートしていきます。

この活動は、皆さまからご寄付と(特活)ジャパン・プラットフォームからの助成を受けて取り組んでいます。

2025年6月 畑にソルガム(穀物)が芽生える

執筆:イエメン事業担当 中西

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