
いつも温かいご支援をありがとうございます。
アドラ・ジャパンは現在も、石川県穴水町や輪島市などで被災者支援活動を続けています。
8月23日(土)・24日(日)の2日間、静岡県袋井市から市内の中学生8名と、教育委員会・危機管理課・社会福祉協議会の職員の方々が穴水町を訪れ、支援活動に参加してくださいました。
袋井市とアドラ・ジャパンは2008年からの長いご縁があり、昨年も袋井市の別の中学生が穴水町でボランティア活動を行ってくれました。袋井市では「未来Create Club」という取り組みがあり、意欲ある中学生が放課後に集まり、地域貢献活動に取り組んでいます。今年の中学生が掲げたテーマは「防災」。南海トラフ巨大地震の発生が懸念される中、彼らの関心の高さと行動力に心を打たれました。
1日目 解体跡地にて防草シート張りのボランティア


中学生たちはまず、穴水町社会福祉協議会で活動内容の説明を受けました。社協の方々が写真を交えて、町の被害状況や支援の取り組みを紹介。生徒たちは真剣な表情で耳を傾けていました。
その後、25m×40mの解体跡地で防草シート張りの作業に挑戦。汗ばむ暑さの中、ボランティアの方々と協力しながら、精力的に作業を進めました。


一緒に作業したボランティアの方々は各地方から穴水に集まり、「穴水レンジャーズ」というチームを結成し、現在も月に1〜2回災害ボランテアセンターで活動を続けています。この穴水レンジャーズと一緒に作業しました。

作業後の懇談会では、生徒たちからこのような声が聞かれました。
– 「ボランティア活動が楽しかった」
– 「大規模な活動をしている方々はすごい」
– 「穴水レンジャーズってすごい。どうやって仲を深めているんですか」
引率の職員の方々からも、「ボランティアの原動力は?」「穴水に来るきっかけは?」など、活動の背景に対する関心が寄せられました。
ボランティアの皆さんからは、中学生に向けて温かいメッセージが送られました。
「災害を経験していない皆さんだからこそ、今回の活動を通して想像力を働かせて地元の防災に活かしてほしい」
「日々の思いやりや協調性が、災害時の協力につながる」
「袋井でも“穴水レンジャーズ”のようなチームを作って、平時から防災に取り組んでほしい」
活動を通して、ボランティアの方々を進んで手伝う生徒や、懇談会後に勇気を出して質問する生徒の姿が見られました。また、社協やボランティアに感謝のメッセージを残したりサインをもらったりする生徒や、握手して帰る生徒もいました。
2日目 仮設住宅の住民の方々との交流カフェ

2日目は、土砂崩れの現場や認定NPO法人レスキューストックヤード(https://rsy-nagoya.com/)の活動拠点「ボラまち亭」の見学、そして仮設住宅の住民の方々との交流カフェが行われました。
土砂崩れの現場を見て、その被害の大きさに言葉が見つからない生徒や、手を合わせる生徒の姿が見られました。
その後、穴水町最大の仮設団地の集会所でカフェを行いました。静岡名物のうなぎパイと冷たい緑茶を中学生が提供。住民の方々は事前に静岡県の地図を調べてくださっていて、「山と海に囲まれていて穴水と似ているね」と会話が弾みました。
ある住民の方は、自作の花の写真を見せながら震災前の暮らしや園芸の話を語ってくださり、生徒たちは「きれいですね」「何のお花が好きなんですか」と言葉を返していました。さらに「一緒に絵を描きませんか」と声をかける生徒もいました。
別のテーブルでは、袋井市のパンフレットを広げながら郷土料理「たまごふわふわ」や夏の風物詩「遠州の花火」を紹介。住民の方は「穴水にも祭りがあるのよ。今年は再開できて嬉しかった」と話し、生徒たちは「楽しそうですね!」と笑顔で応えていました。
仮設住宅の暮らしについても、住民の方が図を描きながら説明してくださり、実家の解体や健康管理の工夫など、日々の生活の様子を丁寧に教えてくださいました。「高台にある仮設は買い物が不便なの」「津波警報が鳴るたびに怖かった」「貴重品はすぐ持ち出せるようにしていた」などの住民の言葉に、生徒は真剣な表情で話を聞いていました。
ある生徒は「1月1日だったので寒かったですよね」と前置きし、「静岡でも地震があると言われていますが、何を準備すればいいですか」と防災について質問。住民の方から実体験に基づいたアドバイスを受けていました。
カフェでは、生徒たちからこのような感想が聞かれました。
「被災経験を明るく話してくださって、すごいと思ったし嬉しかったです」
「震災で生活が大きく変わったことを知り、命の大切さを感じました」
「仮設生活を1年以上続けている方々に頭が下がります。復興に向けて一緒に頑張りたいです」
住民の方々の中には、生徒の素直な言葉に涙を浮かべる方もいらっしゃいました。

生徒の感想を聞いた住民の方がこのような言葉を残してくださいました。
「今日のことをふと思い出してくれたら、私たちは嬉しいです。私がここの仮設に来たときは、住んでいた場所も年齢も違う知らない人ばかりでした。でも今では、少しずつ住民同士の交流が生まれています。仮設を出るのは嬉しいことだけど、今では寂しさもあります。ここでは、みんなの関係や助け合いが築かれているんです。」
限られた時間の中でのカフェ活動でしたが、住民と生徒の温かい交流が見られました。

中学生が帰った後も、住民の方々は生徒の名前や会話をよく覚えてくださっていました。
「たまごふわふわ、おいしそうだったね」
「いただいたお茶は、他の住民とも美味しくいただいています」
「今まで多くの支援者が来たけれど、今回の中学生との交流は楽しくて元気をもらった、記憶に残るわ」
などの声が聞かれました。
つながりが防災の未来をつくる
「防災」をテーマに掲げ、穴水町のためにできることを真剣に考え、行動した袋井市の中学生たち。その思いは、支援に携わる方々や住民の心にしっかり届いた2日間でした。
この体験と出会いが、彼らの未来の一歩となり、地域の防災の一歩につながっていくことを願っています。さらに、袋井市と穴水町、アドラ・ジャパンのつながりが末永く続いていくことも願っています。
今回の袋井市の訪問を通して、現地の方々の温かい受け入れと助け合いの力が、私たちの日々の活動を支えていることを改めて実感しました。
このような素敵な時間と貴重な機会にご協力してくださった袋井市の皆さん、穴水町の皆さんに心より感謝申し上げます。
(執筆:国内事業課 大澤 明浩)

