
「家も持ち物もすべて失いましたが、家族がそろって無事だったことに感謝しています」
2026年8月に、ネパール北部で起きた大規模洪水の被害に遭ったルヌカ・ネパリさんは、そう語ります。現在、ルヌカさんと家族は、政府が運営する一時避難施設で生活しています。
<長年の努力で築いた、家族の暮らし>
ヌワコット郡に住むルヌカさんの暮らしの中心には、家族と、長年かけて築いてきた住まいがありました。
夫は家族を養うため、サウジアラビアへ出稼ぎに行き、長時間働いていました。その間、ルヌカさんは家事や2人の幼い子どもの世話に加え、高齢の義両親の介護も担っていました。自宅では小さな果物店と仕立ての仕事も営み、家計を支えてきました。
貯蓄を重ね、借り入れも活用しながら、ようやく完成させた念願の家。トリシュリ川から離れた場所にあり、家族にとって安心して暮らせる場所でした。
しかし、2026年8月26日の朝、その日常は一変します。
<いつもの朝を一変させた洪水>
その朝、ルヌカさんは台所で朝食を準備していました。幼い息子は学校へ行く支度をしていました。
そのとき、外から切迫した叫び声が聞こえてきました。
「洪水だ! 逃げて!」
何が起きているのか理解する間もなく、近所の人たちが家に駆け込み、避難するよう促しました。警察のサイレンが鳴り響くなか、ルヌカさんは家族とともに、裸足のまま丘へと逃げました。靴も、大切な書類も、家族の思い出の品も、何ひとつ持ち出す時間はありませんでした。
斜面を登りながら振り返ると、泥と水が押し寄せ、住んでいた地域をのみ込んでいく光景が目に入りました。長年の努力を重ねて築いた家は、わずか数分のうちに完全に流されてしまったのです。
「本当につらかったです。何年もかけて一生懸命築いてきたものが、1分もしないうちになくなってしまいました。持ち物はすべて失いましたが、神様のおかげで、家族全員が無事でした」
ルヌカさんは、当時のことを静かに振り返ります。
家も、家財道具も、それまでの暮らしを支えてきた仕事の場も失いました。それでも、家族全員が命を守ることができたことは、何にも代えがたいものでした。

<被災直後の暮らしを支える緊急支援>
当初、ルヌカさん一家は首都カトマンズの親族のもとに身を寄せていました。その後、被災した自宅の跡地に戻りましたが、そこに以前の暮らしはありませんでした。
現在、家族は地元の一時避難施設で生活しています。
ADRAは、洪水発生後の緊急対応を通じて、被災したルヌカさん一家に食料や調理用品、衛生用品などの緊急支援物資を届けました。住まいも生活用品も失った家族にとって、こうした支援は、避難生活を続けるための大切な支えとなりました。
しかし、避難生活が長引くにつれ、新たな課題も生まれています。

<冬の到来を前に、新たな課題>
ルヌカさんは最近、女の子を出産しました。
新しい命を迎えた一方で、家族には、これから迎える冬への備えが必要です。生まれたばかりの赤ちゃんには暖かい衣類が不足しており、家族の栄養を確保することも重要な課題となっています。
緊急の食料支援は、被災直後の生活を支えました。しかし、家族がこれからの数か月を乗り越え、生活を立て直していくためには、継続的な支援が欠かせません。
こうした状況を受け、ADRAは次の段階の支援を計画しています。具体的には、生活に必要なものを購入するための現金給付と、冬の寒さから身を守るための防寒支援物資の提供を予定しています。
ルヌカさん一家が赤ちゃんを寒さから守り、家族の栄養を確保しながら、今後の生活を立て直すための一歩を踏み出せるよう後押ししていきます。
これらの活動は、 皆さまから寄せられたご寄付と温かいお気持ちによって支えられています。
心より感謝申し上げます。

