
中東レバノン東部の街、バールベック。
ここで暮らしていた7歳の少年ラミくんの日常生活は、突然変わってしまいました。 本来なら宿題や友達とのサッカー、ノートに書いた絵に塗る、色鉛筆の色の事を気にする年齢です。

しかし、レバノンで3月2日から激しくなる戦闘の中で、ラミくんと家族は家を離れ、安全な場所へ避難することを余儀なくされました。
「爆撃の音がとても怖かった。すごく大きな音だった。」
街では、空襲を警報するサイレン、空爆や迎撃、爆風で揺れる家の窓、地鳴り。それらの音が昼夜かかわらず鳴り響きます。
夜に急いで家から避難したため、ラミくんは大切なものを家に置いてきてしまいました。学校のカバンです。
その中にはノートや鉛筆、そしてもう一つ、とても大切なものが入っていました。
小さなテディベアです。
それは、ただのおもちゃではなく、バールベックの学習センターで、ラミくんが難しい算数の問題を解いたとき、先生が「賢いね」と言ってプレゼントしてくれたものでした。
ラミくんがその話をするとき、目には涙が浮かびます。
「学校のカバンを忘れた……テディベアも。算数を解いたから、先生がくれたんだ。」
慣れない避難生活の中で、そっと抱きかかえることが出来たら、彼の不安は少し和らげたはずです。そのテディベアは、励ましであり、友達と一緒に学ぶ教室の温かさそのものでした。

今、ラミくんと家族は、以前より安全な場所に逃れ、爆撃の音は遠くなりました。
避難先の生活では、多くの家族が食料、生活用品、そして子どもたちの教育や心のケアを必要としています。3月2日からレバノンでは、390人以上がすでに亡くなり、1,100人以上が負傷、58,000人以上が国内で避難民として生活を過ごしています。中東の小さな国、レバノンは周りをシリアとイスラエルに囲まれ、陸の孤島と呼ばれます。人々が逃げられる場所は限られており、いつ食料や、体を温めるための燃料が尽きるか、人々の不安は尽きません。
ラミくんの家族も、父親は市場で野菜を売る日雇い労働者で、毎日早朝に家を出て、家族が食べていけるだけの収入を得るために遅くまで働いていました。母親は糖尿病を患い、働くことができません。命には代えられないとはいえ、避難をすることで、明日を生きるための収入源も絶たれてしまいました。
ラミくんの家族を含む避難民世帯には、食料、安全な飲料水、防寒用品や衛生用品などの生活必需品、避難所での環境整備、心理ケアなどが必要です。ADRAはこれらのものをできるかぎり届け、子どもたちが再び安心して学べる環境を取り戻すために活動していきます。

2024年9-10月に、レバノン危機が起きた際も、ADRAは避難民の方々に食事の提供や、食料などと交換できるカード、衛生用品などの生活必需品を届け、避難所では、子どもたちへの一時的な教育の場も設けてきました。
「平和がほしい。友達に会いたい。」
ラミくんの願いはとてもシンプルです。
家に戻り、普通の毎日を取り戻すこと。
中東地域には、ラミくんのように、不安を抱えながら日々を生きている子どもたちが数えきれないほどいます。
空襲のサイレン、空爆や迎撃の音や振動で、夜中に何度も目を覚ましてしまいます。
ADRAは、ラミくんのような中東の子どもたちが安心して眠れる夜を過ごせるように、彼らの未来を取り戻すために活動しています。
彼らの「当たり前の日常」を少しでも取り戻せるよう
皆さまの温かいご支援を、どうぞ、よろしくお願いいたします。
(中東地域担当:中西)

