【フィリピン・セブ島沖地震】活動報告~現金支援と心のケア~

昨年の2025年9月30日に、フィリピン・セブ州北部で発生したマグニチュード6.9の地震。震源が浅かったため広い範囲で強い揺れが発生し、2,329回にもおよぶ余震は多くの住民に不安な日々をもたらしました。

この地震により68人が死亡、559人が負傷し、約36万6千人が被災。また、約7万7千人が避難を余儀なくされ、多くの人々が避難所や親族宅などでの生活を続けています。

住宅も2,399棟の家屋が損壊したほか、道路や橋、学校、医療施設などのインフラにも甚大な被害が生じました。復旧・復興には多額の費用が必要とされ、被災地域では長期的な支援が求められています。

この地震を受け、ADRAの緊急対応チームは、被災された方々への緊急支援を実施しました。今回の支援では、生活再建を支える多目的現金給付(MPCA)と、心のケアを目的とした心理的応急処置(PFA:Psychological First Aid)を中心に活動を展開しています。

行政機関との緊密な連携

被災地において活動するうえで大切なことは、行政機関や支援団体との調整です。この調整を実施することにより、一部の地域や人だけでなく、多くの地域と人々に支援を届けることができます。

ADRAは、セブ州政府や各自治体の災害対策担当部署、社会福祉事務所、バランガイ(地区)行政などと緊密に連携しながら活動を進めました。

発災直後には州政府の災害対策オペレーションセンターへ入り、被害状況や支援の空白地域を確認。他団体との支援の重複を避けながら、最も支援を必要としている地域へ対応できるよう調整しました。

その結果、特に被害が大きかったボゴ市・メデリン町・サンレミジオ町・ダアンバンタヤン町で地域パートナーと共に活動を実施しました。

最も支援を必要とする方々を対象に

支援対象者の選定は、自治体と協議のうえ、被害状況や脆弱性に基づいて決定しました。

特に

  • 住居が全壊・半壊した世帯
  • 避難所や親族宅などで避難生活を送る世帯
  • 生計手段を失った農家や漁業従事者、小規模事業者
  • 高齢者、障がい者、妊産婦、ひとり親家庭
  • 地震による不安や恐怖、ストレスを抱える子どもや大人

を優先することに決め、ボランティアとADRAスタッフが各家庭を訪問し、被害状況や生活状況を確認したうえで受益者を決定しました。

現金給付と心のケアを通じて、被災された方々の暮らしと希望を支える

発災直後の初動対応では、1,220世帯に対して現金給付を実施しました。食料や飲料水、医薬品、交通費、住宅の応急修理など、被災した家庭がそれぞれの状況に応じた必要なものを購入できるようになっています。

その後、多くの方からご寄付をお寄せいただいたことで活動を拡大することができ、さらに330世帯への現金給付支援と、600名(大人400名、子ども200名)への心のケアを行うことができました。

安心と尊厳を守る現金給付

現金給付支援では、各世帯に1,500ペソが支給されました。これは現地で概ね3日分の賃金にあたります。

配付会場では、本人確認の徹底・安全な待機列の管理・高齢者や障がい者、妊婦、小さな子ども連れの親に向けた優先レーンの設置などを行い、安心して支援を受けられる環境づくりに努めました。

また、被災された方々の声を聞く仕組みも大切にし、配付会場に相談窓口も設置しました。

心のケア(PFA)による包括的な支援

今回の地震では、繰り返される余震によって、多くの住民が不安や恐怖を抱えていました。特に、子ども・高齢者・障がいのある方・妊婦・授乳中の母親・住居被害や避難生活を経験した世帯への支援を重視し、心のケアに取り組みました。

この活動には、タンボンゴン・セブンスデー・アドベンチスト教会の青年ボランティアの方々に協力いただいています。それぞれ事前に心のケアの研修を受講してもらい、その後被災家庭を訪問してもらいました。

「被災者の話に耳を傾ける」「不安やストレスへの対処法を伝える」「家族や地域とのつながりを促す」といったことを心掛け、さらに、専門的なケアが必要と判断された方については、地域の保健・福祉機関へつなぐ体制も整えました。

支援を受けた600名には、心のケアに加えて5kgのお米と啓発資料も渡されました。

心のケアを受けた方の声

「あの夜、末っ子が近くの体育館で行われるバスケットボールの試合の審判に出かけていました。体育館が地震で崩壊したと聞いた時、私はすぐに胸騒ぎがしました。末っ子がまだ帰宅していなかったのです。心のケアのセッションに参加し、落ち着かない自分の気持ちを他の人たちと分かち合えたことは、本当に大きな支えになりました。」

ジェマさん(58歳/セブ州サンレミジオ町)

「地震が起きた瞬間、私は7人の子どもたちを連れて裸足で外へ逃げました。走りながら、家族の無事をただ祈ることしかできませんでした。今も恐怖は残っていますが、心のケアのセッションで同じ体験をした人たちの話を聞き、自分の気持ちを分かち合うことで、心がずいぶん軽くなりました。」

ジョアンさん(39歳/セブ州サンレミジオ町)

皆さまの温かいご支援により、セブ島地震で被災された多くの方々へ、生活再建のための資金と心のケアを届けることができました。

災害からの復興は長い道のりですが、現金支援による生活基盤の回復と、心のケアによる心理的な安定の両面から寄り添うことで、人々が再び前を向いて歩み出すことができています。心より感謝申し上げます。

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