東日本大震災被災者・震災復興-144 宮城県山元町の今

築山

こんにちは。
国内事業担当の三原です。
今回は、2011年4月から長期に渡って復興のお手伝いをさせていただいていた宮城県山元町の現在についてお伝えいたします。

改めてお伝えしますと、震災前の山元町の人口は約17,000人、いちごとりんごとホッキ貝が特産の自然豊かな小さな町でした。震災による甚大な被害を受け、死者637人、4,440棟の家屋が津波で流出したり、大規模半壊、一部損壊の被害を負いました。現在は約12,450人の方々が生活をしています。

【沿岸部】
津波の大きな被害を受けた沿岸部は未だ工事中の箇所もありますが、津波が起きた際の一時的な避難場所としても活用できる築山(人工的に作った山:高さ9メートル)が完成していたり、津波で流された木樹を取り戻すために植林がされていたりします。沿岸部は防災緑地ゾーンとして公園やレクリエーション施設等を設置して交流の場にもなるよう整備が進められています。

築山
植林

【仮設住宅】
災害復興公営住宅を含む新市街地(3ヶ所)が完成したこともあり、現在、山元町内で仮設住宅に住んでいる方はほぼいません。2018年3月末までに町内全ての仮設住宅の取り壊しが予定されています。以前は活気があった仮設住宅も今は静かな状態になっています。

空き家となった仮設住宅

【新市街地】
新市街地として整備されたつばめの杜地区に設置されたこどもセンターへお邪魔しました。

こどもセンター

こどもセンターは児童館、子育て支援センター、児童クラブの3つの機能を兼ね備えた新しい施設です。子育て支援センターは、以前ADRAがお散歩カーや電子レンジ等を寄贈した「子育てサークル 夢ふうせん」が運営しています。子どもたちが遊びやすいように様々な工夫が施されており、訪問した際にもたくさんの子どもたちが楽しそうに遊んでいました。

子どもが遊びたいおもちゃのカードを選んでスタッフに渡すとそのおもちゃを出してもらえる

【トレーラーハウス】
ADRAは、コミュニティの交流の場としてトレーラーハウスを2013年12月に花釜区内に設置し、2016年4月に花釜区と山元タイム(住民の方々による手芸グループ)に1台ずつ寄贈しました。寄贈後もトレーラーハウスは住民の方々によって活用されています。花釜区に寄贈したものは交流センターの脇に設置され、主に消防団が利用しています。住民の方々が新たにテレビ等を取り付けており、使いやすい空間になるようにさらに工夫をしていることが分かりました。山元タイムに寄贈したトレーラーハウスは引き続き住民の方々の集まりに利用されています。特に、手芸活動を行なう女性グループは参加人数が以前よりも増え、活動は充実しているそうです。

手芸活動の様子

【笠野区】
今回の訪問では、沿岸部に位置する笠野区の住民の皆様と約2年ぶりにお会いすることができました。お元気そうな様子を拝見でき、個人的にも大変嬉しいできごとでした。ある80代の女性は、以前は仮設住宅を出る不安を語られていたのですが、今回お話を伺ってみると、「たまにこうやって集まりもあるからみんなとおしゃべりできて嬉しいね。でも機会は減ったけどね」とおっしゃっていました。震災によってコミュニティが何度も分断されていく中、それにも負けず逞しく生活している姿が印象的でした。

笠野区の75歳以上の方々の集まりでお話を伺う

【こころの健康診断】
2012年2月から2013年3月まで、山元町社会福祉協議会とやまもと復興応援センター全職員を対象に臨床心理士による「こころの健康診断」と題したカウンセリングを実施しました。当時、支援者に対する心的ケアの必要性を指摘する声が高まっていました。また、私たちも自ら被災しながら支援に携わっている方々の心的ケアの重要性を非常に強く感じていました。そのため、身体と同様に心も健康診断をしてみましょう、という切り口で少しでも受けてもらえるように、プログラムの名称を「こころの健康診断」としました。
今回、当時の職員のお一人に偶然お会いでき、その際に「あの時期にこころの健康診断を受けることができて良かった。受けられたから一旦気持ちの整理をつけて、今好きな仕事にまたつくことができている。」というお言葉をいただくことができました。

山元町は新市街地の整備も整い、住民の方々は新しい生活を始められています。家、交通、買い物等の便が整うことで住民の方々は以前よりも落ち着いているように見えました。今後の生活に期待をしているとお話しをされる方もいらっしゃいました。しかし、震災の傷は決して癒えることはなく、お一人おひとりの中に深く刻まれ、今なお苦しんでいる方々もいらっしゃることを忘れてはならないと思っています。

ADRA Japanは、2017年3月で東日本大震災復興支援を一区切りとさせていただきましたが、その後も現地の要請に基づいて必要な支援を行っていきます。

(執筆:国内事業担当 三原千佳

築山

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