東日本大震災から10年~現地の方々の今の想いとは《後編》

2011年3月11日14:46に発生した東日本大震災から、今日で10年です。

ADRA Japanでは、住民の方々が“今何を思われているのか”をご紹介することで、皆さんと一緒に改めて震災について考え、知り、これから一人ひとりに何ができるのかを考えるきっかけとしたいと思いました。

私たちが当時現地で一緒に活動し、今でもお付き合いをさせていただいている方々からいただいた言葉を、3日に渡ってご紹介しています。

3日目の今日は再び福島県からのお言葉をご紹介します。

【福島県立岩瀬農業高等学校 常勤講師(元福島県立双葉翔陽高等学校長) 渡辺 譲治様より】

―震災から10年―

2019年11月に高体連馬術競技部会長として南相馬で大会を主催しました。

避難解除された南相馬市小高区や浪江町の周辺、そして帰還困難区域である浪江町津島地区を走って隣町にある自宅に戻りました。

その時の率直な感想、「震災は終わっていない」と、いうことです。

2011年に「1000年に一度の巨大地震」に遭い、2019年10月に「50年に一度の大雨被害(台風19号)」に遭い、そして今年は、「100年に一度のパンデミック」を経験している中で福島県はいまだに余震に晒され、福島県の農産物は、震災前の価格に戻っていない現状があります。

しかしながら、3.11を契機に多くの方々のご支援をいただき、普段の生活では考えられないような経験をさせていただいたり、いろいろな人たちとのめぐり逢いがあり、自分も含めこの10年で携わった生徒たちも同じような貴重な経験をしたことと思います。

特に、アドラ様など支援団体などから受けた支援は、人に寄り添った本当の支援だったと思っています。

現在コロナ禍で人と人の繋がりは難しいですが、人の温もりや人の醸し出す雰囲気をネットではない五感で感じることがこれからもより重要になってくると思います。

今、日本のみならず世界の多くの地域で災害が頻発しています。

これからこの地球を守るために田舎からできることから始めていきたいと思います。

双葉翔陽高校の生徒さんと仮設住宅に住む住民の方々。生徒さんが自ら企画をして足湯やすいとんを提供して交流した当時の様子

【福島県相馬郡飯舘村住民の大澤和巳様より】

―震災後、10年目の覚悟―

私は飯舘村に生まれ、50数年飯舘村住民として過ごしてきた。

2011年3月11日に発生した東日本大震災と、それに伴う福島第一原子力発電所の爆発事故。

震災後、福島市に避難し、現在は市内に新たな住居を構えた。

あれから10年の歳月が流れた。

震災から10年、この10年で村の景観は変わった。

私はいまでも住民票は移さないでいる。

それはまだ飯舘村に元々の自宅があり、畑もあり、ご先祖様のお墓があるからである。

時々、様子を見に行くけど、当時、住んでいた部落に人はいない。

まぎれもなく地域コミュニティーの崩壊である。

同時に耕作地の壊滅でもある。

自宅の周りには放射能で汚染された土や除去物を入れたフレコンバッグが山積みのままになっている。

鳥のさえずりや風の音は震災前と変わらないような気がするのに人の声が聞こえなくなった土地は無性に寂しい。

この10年間のあいだに両親、そして妻を立て続けに亡くした。

心が折れそうになった時に支えになってくれたのは残された4人の子供たちである。

今では、孫が3人になったが、亡くなっていった両親や妻は知る由もない。

毎朝、仏前に向かって線香を挙げ手を合わせて祈る。

失われた地域のコミュニティーは元に戻ることはないだろう。

むしろ、今後は故郷に戻る人、戻らない人との共存と連携をどのように維持、発展させていくかが課題である。

そして、もうひとつ。

新しい動きがある。

それは、2017年3月に一部の部落を除き避難解除後、村に県内外からの移住者が増えていることである。

年齢層やキャリアなど幅広い分野の人々が入村し、新たな起業を興している。

こうした人たちと帰還した元住民との交流を介して、新しい共存、共栄への扉が開きそうな予感がする。

「新しい風」が吹き、「新しい村」が生まれることを期待しつつ、私もこの春、村に帰還することを決めた。

震災後10年目にしての覚悟である・・・。

R3.2.21

アメリカの学生が福島県を訪問した際の当時の様子

3日間をかけて、6人の方からのお言葉をお伝えしました。

住民として震災を経験した皆さんにしか語れない言葉、皆さんだからこそ語れる言葉だと思います。

ADRAからのお願いを受けてくださったことを心から感謝します。

私たち一人ひとりに何ができるのか、改めて考えてみませんか。

(執筆:国内事業課 三原千佳)

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