個人に力を。子どもだけでなく大人も人生を変えられるアドラの教育支援

私たちは支援活動の中で地域の人々の自立を促すことを心がけています。そのため、教育支援活動においても、学校の建設や運営に地域の方々が主体的に関わっている状態を尊重し、必要なトレーニングを提供するなどして主体性が保たれるよう細心の注意をはらって活動しています。

アドラ・ジャパンが2017年より教育支援を行っているジンバブエのゴクウェ・ノース地区は、
教育を受けることができていない子どもの割合が15.3%と、国の平均である6.6%と比べて2倍以上多い地域です。

教育は、個人に貧困の連鎖から抜け出す力を与えたり、コミュニティ全体の発展を促すとても大切なもの。この地域の子どもたちが学校を通えなかったり、中退してしまう現実を改善するため、学校に対する支援と、コミュニティーに対する支援の両側面からアプローチしています。

 

そしてこの努力は、学校の完成という成果以上に、建設や運営に関わってきた周囲の大人たちにも、人生を変える変化をもたらしました。

この記事では、2019年から支援に取り組んでいるチリサ小学校で、建設に携わった21歳の若者、ネイサンさんをご紹介します。

ネイサンさん(21歳)の話

ネイサンさんは8人家族です。ご両親と2人の兄弟、3人の姉妹がいます。日本でいう中学校を卒業していますが、仕事がありませんでした。同じような境遇の若者は、次々に犯罪に手を染めていきます。ネイサンさんもすることが見つからず、将来への希望も持てずにいました。

そんなとき、アドラが教育支援で学校を建設している場面に出くわしたネイサンさんは、ある行動にでます。それがネイサンさんの将来をガラリと変えることになるとは、このときは思いもしませんでした。

 

 

ネイサン・ムザンバさん(撮影:ジョイス・ンビリリ)

 

私は一般教育課程修了後、何もやることがありませんでした。技術を習得する課程に進むことを望んでいましたが、そのような恵まれた機会を得る場所を知りませんでした。私のコミュニティでは、若者は当てもなくぶらつき、違法な取引に加担したり、麻薬に手を出したりしています。若者にはすることが何もないからです。

 

ある日、私はチリサ小学校にあるアドラの建設現場に行き、建設作業に興味を持ちました。建設作業員たちは、私に「アドラ・スタッフのンビリリ(Mbiriri)さんからボランティアとして働けるよう許可をもらい、働きながら学び、技術を習得しなさい」と助言してくれました。その後、ンビリリさんが私を校長と学校開発委員会に紹介してくれ、ボランティアとして働くことになりました。助言に従った結果、私の世界は暗闇から輝きのある世界に変わりました。

ボランティアを始めてからも、数人の若者が、私にタダで働くよりも簡単にお金が稼げる違法の採鉱や砂金の選鉱をするように声を掛けてきましたが、私は断りました。私はンビリリさんに建築学への関心が強まっていることを話し、彼女は地域で建築学を教えているチムハル(Chimharu)氏を紹介してくれました。

 

2020年、幸運なことに、私はアドラがチリサ小学校で建設する教員宿舎の建設作業員アシスタントして選ばれました。建設作業で得た収入で私は家族を支えることができるだけではなく、私の学費も支払うことができるようになりました。

 

2020年10月6日、私は政府認定の技能試験(3級)を受けました。足場に関する学科は再試となりましたが、レンガ積みの技能試験には合格しました。現在、足場について復習しており、次回は合格すると確信しています。

 

技能試験3級を取得した暁には、2級取得に向けてさらに自分自身を向上させたいと思っています。そのために、チムハル氏の教える2級の学科クラスを受講する予定です。

今では、私のコミュニティの多くの若者が私をうらやましがり、私の後に続きたいと思っています。これはとてもうれしいことです。彼らが私の後に続く日はとても近いと確信しています。

 

私を救ってくれた神様に感謝しています。建築学に進むことにより、麻薬と違法取引に陥らずにすみました。

 

アドラにも感謝しています。アドラの事業は私の人生を完全に変えてくれました。

 

(完成したチリサ小学校と学校開発委員会、ADRA Japanスタッフ)

 

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