厳しい環境にあるモンゴルにて、品種改良された羊の育成と農業技術の底上げを

世界120か国に支部を持つADRAは、モンゴル政府が容認した「羊を育てて有効活用する」政策、『ファイン・ウール・プロジェクト』に着手しています。

2022年、308頭の雌羊に人工授精をほどこし、その65%にあたる195頭が妊娠するにいたりました。翌2023年の5月には、134頭の子羊が生まれ、2024年1月26日現在までに38頭の生存が確認されています。

一方で、子羊が亡くなってしまう主な原因は、雌羊が妊娠中に栄養失調となってしまうことや、冬から春にかけて深刻な寒さが続くモンゴルで繰り返し発生するゾド現象の影響を受けていることが明らかになっています。

ゾドとは、放牧地の不足や悪天候を中心とした複合的な要因により、家畜が大量死する自然災害のことです。

2023年には人工授精と並行して、雌羊から受精卵を採取し、これを別の雌羊の子宮に移植して胎子を育て分娩させる胚移植も試みました。計230回分のヒツジ精液と148のヒツジ胚が用いられました。

ハンガイ種による人工授精の成功率は84.5%、同胚移植が42%、オルホン種による人工授精の成功率は51.5%、胚移植では58%という数字を残しました。

来たる2024年4月から5月には、新たな子羊たちが生まれる予定です。同プロジェクトは、2023年の教訓から、子羊の死亡率を低下させるために妊娠中の雌羊に高品質の飼料、乳、ミネラルを提供中です。

実はモンゴルの羊毛は固く、衣服には向いていません。そこで、品種を改良し、身近に使えるような羊毛を作ることを検討しています。

例えばオーストラリアから別種の羊を連れて来てかけ合わせ、クオリティの高い羊毛を作りだせば、モンゴルの方の収入が増え、生計向上に繋がるという思いがあります。

モンゴルが共産主義だった時代、牧畜民は協同組合を維持・管理し、獣医サービスと遺伝子繁殖サービスを提供して羊を飼っていました。

しかし、1992年に民主主義体制となってからは、組合や政府からの獣医などのサービスも崩壊しました。



今後、ADRAはモンゴル西部の開拓が進んでいない地に農業を広め、収益につなげることも目指していきます。

極寒地形、そして地質の悪さで、女性や子どもの死亡率が高く、さらには野菜が多くは育たず、住民の栄養が欠如している土地に、ソーラーパネルを使用したビニールハウスで野菜を栽培し、市場に売り出すことを考察しています。

現在、当地で農業ができる期間は、一年を通して3か月しかありませんが、ビニールハウスを用いることで、6か月に延ばすことができます。また、農業になれていない人、経験のない人たちに技術を伝えていこうと考えています。

今後、4年間をかけて、農業のやり方を周囲に教えられるマスタートレーナーを育て、コミュニティの人々にその方法を伝え、農業技術の底上げをしていく事を目標にしています。

それには、皆さまからの温かいご支援が欠かせません。

引き続き、ADRAの人道支援にご理解とご協力を、よろしくお願いいたします。

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