紛争で傷んだ給水設備の修理完了。15,000人が安全な水を使えるようになり病気を減らすことができました

みなさん、こんにちは。

エチオピアのアムハラ州で2022年11月から取り組んできた紛争危機対応のための水衛生支援事業において、予定していた活動が完了しましたのでご報告します。

エチオピアの国土面積は日本の約3倍あり、人口は約1億2300万人。世界で11番目に多い国です。エチオピアにはオロモ人、アムハラ人、ティグライ人、ソマリ人など約80の民族が暮らしています。主な宗教はキリスト教、イスラム教。主要産業は農業で、エチオピアコーヒーは日本でも有名です。アフリカで唯一植民地にされなかった歴史を持ちますが、2020年11月に勃発したティグライ紛争が尾を引き、今も非常事態宣言下にあります。

ティグライ紛争はエチオピア政府(特にアビィ・アハメド首相が率いるエチオピア国防軍)とディグライ州を基盤にするティグライ人民解放戦線との間で発生した内戦です。ティグレイ州だけでなく、国境を接するエリトリアや、エチオピア北部のアムハラ州、アファール州にも甚大な被害が及び、教育機関、医療・保健機関、水道や農地などが破壊されました。

2022年3月31日時点で国内避難民となった人は260万人にのぼり、約940万人が何らかの人道支援を必要とする状況に陥っています。特に水衛生の分野においては、520万人が支援を必要としている状況です。

被害が一番深刻なのはティグライ州であるものの、治安の状況から活動をすることがまだ難しいため、ADRAでは、次に被害の大きいアムハラ州において調査を進めました。その結果、3つの村で支援がまったく入っておらず、今後も他団体が活動する予定もありませんでした。そこでADRAは、この3つの村を支援対象としました。

当地では、給水車によって届く水の量は限られており、人々は毎日1~2時間以上も歩いて、生活に必要用水を汲みに行っています。安全ではない川の水を使用する人も多くいて、下痢性の感染症が引き起こされる原因にもなっていました。また、伝統的に水汲みは女性・女子の役割とされており、女性や少女はジェンダーに基づく暴力(GBV)等の危険にさらされる状況でした。

また、学校のトイレなども破壊されて使用できない状態で、衛生習慣についての意識もあまり高くなかったため、腸チフスや赤痢にかかってしまう人が多くいました。

 

 このためADRAは、コミュニティの水供給と衛生状況の改善を目指し、給水施設の復旧やトイレの建設、物資配付や衛生啓発に取り組んできました。

以下がこの取組みでの実績です。

  • 対象3村の復旧した給水施設数(ソーラー設置や排水パイプ工事など):3か所
  • 対象3村の給水施設を管理する水衛生委員会の活性化
  • 建設された学校トイレ数:1校6基(男子用2基、女子用3基、障がい児用1基)
  • 建設された緊急トイレ数:ジャラ国内避難民キャンプにて3棟(トイレ4基/棟)
  • 啓発により衛生知識・意識が向上した住民・避難民の割合:100%
  • 水衛生関連の支援物資を受け取った裨益者数:3,600人(600世帯)
  • 生理用品を受け取った女性:1,000人
修理により利用できるようになった給水地点。水汲みによる負担やリスクを減らすことができた。
学校トイレ完成
国内避難民キャンプの衛生啓発イベントの様子

今回の取り組みにより、対象地3村の15,140人(約2,500世帯)の給水状況が改善されました。また、腸チフスや赤痢など水系感染症の発生率は、活動前と比較して減少していることが確認できました。

現地の社会情勢が安定せず、思うように活動を進められない時期や、現地スタッフが避難せざるを得ない困難な状況もありましたが、スタッフの粘り強い対応で活動を成し遂げることができました。

今後もエチオピアでは、地域住民の生計向上や平和な生活環境創りに向けた啓発に取り組んでまいりますので、引き続き皆さまからの温かいご支援をよろしくお願いいたします。

これらの活動は、皆さまからのご寄付と、ジャパンプラットフォームの助成を受けて実施しています。

執筆:エチオピア事業本部担当 小松 洋

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