事業背景
被災者は今
地震から2年が経過しました。被災地の人々は今、どのように暮らしているのでしょう。
家を建て直し始めた家族もいます。
いまだに仮設のシェルターで過ごす人々もいます。被災した町はゆっくりとですが、復興の道を歩んでいます。
しかし、復興の波に乗れず、被災後の生活のまま取り残されてしまう人々もいるのです。それはどのような人たちでしょうか?
復興から取り残される人々
地震後、問題となったのは土地をもたず、日雇いで働いていた人々でした。
住んでいた土地は大家さんが仮設シェルターを建てるために立ち退きを言い渡され、仕方がなく内陸の砂地にシェルターを建てて仮の住居としていました。
しかし、これらの土地は他の人の持ち物であるため、いつ立ち退きを命じられるかわかりません。
新しい町を!新しい学校を!
ADRAはこのように、地震により住む場所がなくなってしまった貧困家庭の人々を受け入れるため、行政と国家防災省との協働で新しい町を建設し、支援することにしました。
この新しい町には約500世帯が入居します。上下水道も完備します。みな、安心して眠れる新しい生活を心待ちにしています。
しかし、この新しい町は新たな土地に建設するため、学校がありません。
一番近い学校へは30分以上歩き、幹線道路や治安の悪い地区を通らなければならず、年齢が低く、体の小さい児童は通学をあきらめなくてはなりません。
地域の子どもたちの学習意欲は高く、家族のために働きながらも勉強を続けている子もいます。
今の貧困から抜け出すために教育が重要なことを知っているのです。
ADRA Japanはここの子どもたちの「学校へ通いたい」という願いと、子どもたちの家族の「安全な学校へ通わせたい」という思いを実現させるため、この町に学校を建設することにしました。
町建設のための測量。周りには砂地が広がっています。
建設作業が進んでいます。現在、約250世帯が入居しました。
「子どもたちの学校ができるのを楽しみに待っています!」
事業概要
ADRA被災者の方々の自立した生活を支援するため、ピスコ郡において被災者の中でも特に弱い立場にある貧困世帯のための新しい町の建設を始めました。
ADRA Japanはこの町に「HAPPY SCHOOL FOR ALL」をテーマに新たな学校を決めました。
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Happy Schoolとは?
私たちの目指す「Happy School」は
- 小さな子どもでも通える学校!
- 地震がきても平気!安全な学校!
- 楽しく学ぼう!楽しい学校!
- 安心して学ぼう!きれいな学校!
- 学校は子どもの遊び場!子どものための守られた遊び場を!
あなたの描く「ハッピーな学校」はどんな学校ですか?
「描こう、みんなのHappy School!」
本事業は外務省NGO連携支援無償協力より助成を受けています。
事業内容
本事業では以下の施設を建設しました。
・小学生のための教室:3室 (約120名の子どもがここで学ぶことができます。)
・就学前教育(幼稚園)の教室:1室(約40名の子どもがここで学ぶことができます。)
・衛生施設(トイレ)
・教員室
・校庭(小学生用・幼稚園用)
また、この学校が継続して管理・運営されていくための施設管理トレーニングを教師、保護者、生徒向けに行なました。
事業報告
第1期事業報告
みなさまのご支援のおかげで、新しい学校、「Villa la Esperanza(ヴィラ・ラ・エスペランサ:希望の町)校」がスタートしました!
2009年10月から2010年5月にかけて、校舎(教室4室)・トイレの建設、及び施設管理トレーニングと心のケアのワークショップが行われました。
完成した学校
2010年4月26日には在ペルー日本大使館目賀田特命全権大使をお招きして、落成式を行ないました。
新しい校舎と賑やかな落成式に子どもたちを始め、先生方、保護者の方々、そして町中の人たちが喜びに沸いていました。
町の人々の希望をのせて、「Villa la Esperanza校」の始まりです。
学校準備委員会の代表として、この新しい学校の開始に向け、事業開始時よりずっとADRAと一緒に準備をし、学校が始まってからはPTA会長となったマリアさん(Maria Bellido)は「これからは、安心して子どもたちを学校に通わせることができます。」と支援者の方々に感謝の言葉を述べました。
また、この落成式に日本大使がわざわざいらっしゃったこと、事業部長が日本から来たこと、そして、日本の支援者の方々から多くの絵を送ってくれたことについて、「こんなに小さな田舎の町の、小さな学校のことを、多くの人が覚えて居てくれたことが、本当に、嬉しかった」と語りました。
1年生のアビガイル(Abigail)ちゃんは自分で作った詩を落成式で発表してくれました。
彼女の中には、新しい学校の様子がくっきりと浮かんでいるようです。
これから6年間、楽しく過ごしてほしいです。
本事業は外務省の日本NGO連携資金無償より助成金を受けて実施されました。
引き続き2010年5月より、第2期事業として、校庭と教員室、図書コーナーの整備・設置を行っています。
(国際ボランティア貯金・世田谷アジアプロジェクトからのご支援を活用し実施しています。)
この他にもブログにて事業の様子を報告していますので、どうぞご覧下さい。
本事業へご理解・ご支援を頂いている皆様へ心より感謝申し上げます。
みなさまの温かいお気持ちが、現地で子どもたちの笑顔を増やしています。
(2010.08.20更新)
第2期事業報告
1期事業に引き続き、2010年5月より2010年11月にかけて第2期事業を実施いたしました。
本事業では以下の活動を行いました。
1.教員室棟(図書室含む)の建設、図書室の設置
2.リクリエーションエリア(校庭・園庭)の整備
3.施設管理トレーニングの実施(PTA対象・児童対象)
4.施設落成記念セレモニー
記念セレモニー
2010年10月27日、新たな施設(教員室、図書室、レクリエーションエリア)の落成記念セレモニーを行いました。
在ペルー日本国大使館の藤原二等書記官も参加してくださいました。
また、事業を支援してくださった(特活)世田谷アジアプロジェクトの方々がペルーまで来てくださいました。
町の人たち・子どもたちがとても喜んでいました。
子どもたちは図書館に贈られた本に大喜びです。
この町には本屋もありません。
「みんなで大切に使っていきます」と約束してくれました。
ほとんどの子どもが「滑り台」や「ブランコ」で遊ぶのが初めてでした。
新しい教室や図書館、校庭をどのように使ったら長く使うことができるのか、
きれいに保って使えるのか、ADRAのスタッフと一緒に学びました。
また、管理のための年間計画も作成しました。
記念セレモニー
10月27日、新たな施設(教員室、図書室、レクリエーションエリア)の落成記念セレモニーを行いました。
在ペルー日本国大使館の藤原二等書記官も参加してくださいました。
また、事業を支援してくださった(特活)世田谷アジアプロジェクトの方々がペルーまで来てくださいました。
町の人たち・子どもたちがとても喜んでいました。
<受益者からのメッセージ>
ヘラルディン・ヴィセンテ・カストロさん 5年生17歳
「私はずっと学校に行くことができませんでした。家が貧しかったので、働かなければならなかったのです。
その後、少し学校に通いましたが、とても遠くて、仕事と両立することができませんでした。
ある日、私の住んでいる町に学校ができると知って、「今度こそ勉強できる!」と思いました。
今はこのADRAが建ててくれた学校で勉強をがんばっています。
この学校を贈ってくれたみなさん本当にありがとう!」
エメルソン・エスピノサくん 5年生
「ADRAの学校、Happy Schoolに楽しく通っています。
僕は勉強が好きです。
今度は図書室もできるので、いろんなことを調べたいと思っています。
学校を贈ってくれた日本の人たちに感謝しています!」
本事業実施のために国際ボランティア貯金よりの助成を受けました。
また(特活)世田谷アジアプロジェクトを始め多くのご支援者の方からご支援頂きました。
皆さまのご支援により、無事に事業を完了することができました。
ご支援くださった皆さまに心より感謝申し上げます。
(ペルー事業担当)(2010.12.13更新)
ヘラルディン・ヴィセンテ・カストロさん
贈呈式で学校で学べる喜びを語ってくれたヘルディンさん。彼女が学校に入学するまでの道のりを見てみましょう。
ヘラルディンさんの家族は地震で家を失い、この町へやってきました。
空いていた土地に藁のマットで囲みを作って住み始めました。
幹線道路の脇でトラック等の洗車をして生計を立てています。
ヘラルディンさんは小学校に入学することができませんでした。
経済的な理由と、学校までの距離が問題でした。
彼女は4人兄弟の2番目でいつも「学校へ行きたい」と思っていましたが、学力の不足から受け入れてくれる学校がなく、たくさんの学校から断られてしまいました。
また、友達にも「一緒に勉強すると、私達の勉強が遅れちゃう」と言われたりしたことで、勉強に対する熱意もだんだん冷めてしまいました。
地震の後、家族の生活はますます苦しくなりました。
ヘラルディンさんは家族の仕事を手伝いながら、洗車の仕方を覚えました。
そして自分でお金を稼ぐことも覚えました。
そんな時、彼女はまた両親に言いました。
「やっぱり学校へ行きたいの」
そこで、今度は特別学校の識字教室に通い、文字を覚え、その後、普通の学校へ転入しました。
でも、その学校では、他のクラスメートと歳が違ったため、先生やクラスメートからの扱いもあまり居心地のいいものではありませんでした。
また、その学校へ通うには毎日1時間も歩かなくてはなりません。
疲れて帰っても、洗車の仕事をしなければなりません。
彼女は疲れきってしまい、また、学校を離れることに決めたのです。
しばらくして、彼女は両親の家の前に、自分の部屋を建てることに決めました。(両親の家と同じように、藁マットの家ですが・・・)
「何かを変えたかった」
と、彼女はそう言いました。
ある日、近所の子どもたちがどこかで「研修」を受けていると聞きました。
そして、何かかわいいカードを持っていました。
気になったので、聞いてみると
「今度、そこに学校ができるんだよ!その学校をきれいに使うための研修を今からしてるんだよ」と教えてくれました。
そこで、家の裏の丘を登ってみると、そこには学校を建てている真っ最中で、近くで先生が「入学登録」をしているところでした。
ヘラルディンさんはすぐに、この学校に入学することを決めました。
ここなら近いから、帰ってからも仕事もできるし、それで学費も払うことができる!
と思ったのです。
(ペルーでは基礎教育は無償で行われていますが、学校の登録料、PTA会費を支払わなければなりません)
そうして、ヘラルディンさんはこの「Villa la Esperanza 希望の町」校の5年生となったのです。
毎日がとても楽しい!先生のお手伝いもしたりして、役に立ってると感じるし。前みたいに友達に拒まれてる感じもしないし。それから、仕事を覚えたおかげで、自分で(学費を払って)学校を続けることができるんです。
ヘラルディンさんに毎日はどうやって過ごしているの?と聞いてみました。
毎朝5時に起きて、7時まで洗車の仕事をします。そして、学校へ行く準備をして8時に学校へ行って、お昼に帰ってきて、お昼ご飯を食べます。そして、午後はまず洗車の仕事をして、車が来ないときに学校の宿題をするんです。ここは電気が無いから、夜には勉強できないからね。
そして、ニコニコしながら、こう続けました。
私の夢はね~、、中学校まで行って、そのあと商売をするための勉強をしたいの。ここに学校ができたことにはすっごく感謝している。仕事をしながら勉強ができるし、何より楽しいから。できたら、、この小学校が中学校までの学校になったらいいのに。
そして、下の写真を取り終わった後に、こう言ってくれました。
地震は今でも本当に嫌だった出来事だけど、今は前向きに生きていかなきゃと思う。ただの砂丘でな~んにも無かったところに、こうやって町や学校を建ててくれたADRAに本当に感謝しているの。どうもありがとう!
そんなヘラルディンさんも17歳になりました。
ADRAが日本の皆さんの支援を運んで作り上げた小さな学校、「希望の町」の学校。
始まったばかりの小さな学校ですが、明るい先生たちと、元気いっぱいの子どもたちが「ここら辺の学校では一番の学校だよ!日本のお友達から贈られた学校だよ!」と誇らしげにしています。
本事業1期は外務省のNGO連携資金無償協力の助成金を受けて、2期は国際ボランティア貯金助成金、および(特活)世田谷アジアプロジェクト寄付金を受けて実施いたしました。
そして、1期2期を通し、数多くの日本の方々にご支援頂きました。
以前ご紹介した通り、日本各地より「ハッピースクールの絵」を送って頂きました。
ペルーでは、在ペルー日本国大使館よりご支援頂きました。
また、日本でこのブログを毎回読んでくださった方々、どこかに共感してくださった方々、、、
これらのご支援・ご協力により、無事に事業を終了することができました。
皆様に心より感謝申し上げます。
多くの人たちの温かい気持ちによって、子どもたちの未来に、そしてその家族の未来に、「希望」を送ることができたのではないか、と感じています。
描こう、みんなのHappy School!
学校の落成式に向け、「Happy School」の絵を募集します。
「Happy School」の絵の募集は、締め切りました。
たくさんのご応募ありがとうございました。
送っていただいたみなさまの作品は、校舎完成落成式の際に展示させていただきました。現地での様子をご覧ください。
ご協力いただいた学校・団体は、以下の通りです。
- 鎌倉市立富士塚小学校
- 広島三育学院小学校
- 広島三育学院大和小学校
- 函館三育小学校
- SDA茅ヶ崎キリスト教会
- 小湊市立小湊小学校
皆様のご協力に感謝申し上げます。