NPO法人 アドラ・ジャパン ADRA Japan
Nepal Oversea Training
三育学院大学 海外実習 2014


概要

2014年8月3日(日)から8月15日(金)まで、三育学院大学(千葉県夷隅郡大多喜町)看護学部の3年生5名と、その他の大学からの参加者4名の計9名を受け入れ、ネパールにて海外実習を行ないました。ADRAが過去に支援事業を行なった地域を訪問したほか、参加型開発ワークショップへの参加、農村での宿泊体験、日本のNGOが事業を行なう村への訪問、現地の医療施設の見学などを通して、ネパールの医療や国際協力について学びました。

 

参加型開発ワークショップ

世界を舞台に活躍するネパール人の開発教育ファシリテーターであるカマル・フュアル氏による参加型開発ワークショップを受けました。国際協力活動を行なう中では「住民主体」「住民参加」という言葉がよく使われますが、実際にどのように住民に働きかければ彼らの参加が得られるのか、住民に主体的に動いてもらうためにはどのようにすればよいのかなど、具体的な方法を学びました。
座学でその方法を学んだあとは実際にカトマンズ近郊の村を訪問して住民の方々と交流し、身につけた手法を実践しました。 GroupWork

グループワークを行ない、それぞれの意見を出し合う


GroupWork2

学んだことを村で実践。住民からの意見を取り入れて地域の問題について考えた

 

 

ビレッジステイ(民家宿泊)

カブレ郡パンチカール村で1泊2日の民家宿泊を経験しました。宿泊するネパールの村の家を初めて目にした学生たちは最初は緊張した面持ちでしたが、ホストファミリーの温かい歓迎を受けて徐々に気持ちが和らいでいったようでした。短い滞在時間の中、薪を使ったご飯の炊き方を教えてもらったり、水牛の乳搾りをしたり、手でネパールの一般的な食事であるダルバートを食べたりと、それぞれの家庭で日本ではできないたくさんのことを経験しました。
翌朝の別れの時、学生たちは目に涙を浮かべ、ホストファミリーとの別れを惜しんでいました。学生からは「たった1泊の時間の中でしたが、お客さんではなく家族のように接してもらい、ネパールの人の温かさを感じた」といった感想がありました。
ネパールの村の家には、日本のような便利なものは一つとしてありません。しかし、そうした便利なモノを超えた人の温かさを、ビレッジステイを通して実感できたようです。

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夕食の調理をお手伝い

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泊めていただいた家のお母さんとも仲良くなりました

 

医療施設見学

ネパールの村落地域で一般的に利用されるサブヘルスポスト(簡易保健所)や、サブヘルスポストに比べて施設が充実しているプライマリー・ヘルスケアセンターに加え、ネパールで一番大きな小児病院である国立カンチ子ども病院、またADRA Japanが20年近く口唇口蓋裂医療チームを派遣しているシーア記念病院など、様々なレベルの医療施設を見学しました。
地域医療を担うサブヘルスポストでは、主に住民が病気にならないように予防医療に力を入れていることや、数名の医療従事者しかいない小さな医療施設ながら一日あたり約70~80名の患者を診察・治療している現状を学ぶことができました。プライマリー・ヘルスケアセンターには結核の診断や治療ができる施設が併設されており、日本ではあまり見られなくなった結核の治療の重要性を知ることができました。
一方、大きな病院では入院患者の家族が治療に必要な薬剤を買い、食事の世話をし、患者とともに病院に寝泊りをするというネパールならではの医療のあり方を目の当たりにし、日本の医療とのギャップを感じているようでした。

 

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簡易保健所の責任者(左)から活動の詳しい話を伺った

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プライマリー・ヘルスケアセンターでは来院していた患者さんへの処置を見学

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シーア記念病院ではカルテの記入内容について説明を受けた

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国立カンチ子ども病院の看護師からの説明を熱心に聞く学生たち

 

ハンセン病患者居住区

ハンセン病により、手や足が不自由になってしまった方々が住む集落とその治療センターを訪問しました。現在ではネパールでも薬物によるハンセン病の治療法が確立されており、原因である「らい菌」に感染してしまっても障がいが残ったり、その後の生活に支障をきたすことはまれになりました。しかし、ここに住む人々はネパールに治療薬が持ち込まれる前にハンセン病の原因であるらい菌に感染し、手足が不自由な状態になってしまいました。彼らはかつて、ハンセン病によって家族から隔離されたり、住んでいた村から追い出されたりしており、ネパール各地からこの場所に移り住んできています。
この居住区には週に2回、医師や看護師が訪れ、感覚のなくなってしまった手や足の治療を受けます。また、治療センターでは義足や義手の製作も行なっており、患者さんの日々の生活を少しでも改善できるようサポートしています。
ネパールに来る前に日本でハンセン病について事前学習をしてきた学生ですが、実際にハンセン病によって障がいを持つ方々を目の前にし、驚きを隠せなかったようです。ハンセン病は適切な時期に適切な治療を受ければ治る病気です。実際に患者さんと交流することにより、この疾患に対する正しい理解を深めることができました。

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患部の処置方法が描かれたポスターの説明を受ける学生たち

 

学校訪問

ADRAからの学資支援を受けて勉強を続けている子ども達のいる学校を訪問した際には、教育分野への関心が高い学生を筆頭に、学生たちが積極的に子ども達とコミュニケーションを取っていました。
ネパールの子ども達はみんな、写真を撮られるのが大好きです。カメラを向けると仲の良い友達同士、集まって笑顔でポーズを取り、デジカメの画像を見ようと集まってきます。人懐っこい子ども達と触れ合う中で、学生たちの顔にも自然と笑みがこぼれました。

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たくさんの子ども達に囲まれる学生

 

バイオガス見学

ネパールの農村部では、食事の準備の際に薪を使うところがまだ多くあります。薪を切り出すことによる森林伐採に加え、台所が家の中にあるため煮炊きをする時の煙が家の中に充満し、呼吸器系の疾患に悩まされることもあります。
ネパールではこうした問題に対処するため、住民のトイレや家畜の糞便をタンクに溜め、そこで発生するガスを調理用に応用する仕組みがあります。この仕組みを導入すると、薪が不要になり家の中に煙が立ち込めることもなくなるほか、トイレを使うことで衛生環境も改善します。学生たちは、日本では見られないバイオガスの仕組みに関する説明に耳を傾けていました。

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写真の右下にある丸い井戸のようなものが家畜の糞便を入れる場所。
その後ろは住民が使うトイレ

 

ネパールで活動するNGO見学

農業分野で活動Love Green JapanというNGOの活動現場を見学させていただきました。近年、ネパールの村落部では化学農薬を長年使用してきたことによる弊害で土壌が痩せてしまい作物が取れなくなったり、農薬が原因と見られる様々な健康被害が発生するといった問題が生じています。それらを改善するため、Love Green Japanは化学農薬を使用しないPIM(Pest Integrated Management:総合的害虫・雑草管理)と呼ばれる有機農法を事業地の農家に普及させています。
有機栽培をしている農家までの道のりも、その農家の周辺も丈の長い草に覆われていましたが、学生たちはそんな草むらをかき分けて農家を訪問し、有機農業の効果について学びました。

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有機農法で大きく育った作物を前に活動の説明を受ける

 

国際協力機構JICAネパール事務所、
在ネパール日本国大使館訪問

JICAネパール事務所では、JICAの活動の分野や方法、現在の対ネパール支援事業についてお話を伺いました。また、ネパールの経済状況や産業分野などについても教えていただきました。

日本大使館では、ODA(Official Development Assistance:政府開発援助)の意義や、日本とネパールの関係、そして現在、日本が行なっているネパールへの支援について学びました。

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JICAネパール事務所では支援事業について詳しく話を伺った

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日本大使館にて、説明をしてくださった大使館職員と記念撮影

 

ネパール保健人口省訪問

日本の厚生労働省に相当する政府機関も訪問し、ネパールの保健医療行政に関する現状と課題についても話を伺いました。話をしてくださったネパール人の医師は、過去の海外実習でも日本から学生が来るたびに時間を割いて熱心に話をしてくださいました。今回も、ネパールの保健システムや政府で推進している政策などについて貴重なお話を伺うことができました。

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ネパールの保健医療対策に携わる医師 から貴重な話を聞くことができた

 

フォト・スカベンジャー

フォト・スカベンジャーとはチームワーク構築のための活動のひとつで、提示されたお題に沿った写真を時間内に撮影してくるというものです。今回は学生を3チームに分け、各チームに個別に割りふられたテーマと、3チーム共通のテーマの写真を撮影してもらいました。
「歯を治すコインの木」や「切手になった窓」といった観光名所のほか、ネパールの人々の日常を理解するための「マンゴー」「青いサリー(女性用の民族衣装)」「モモ(ネパール風の蒸し餃子)を蒸すための蒸し器」など、様々なテーマを撮影するため、学生たちはカトマンズの街中を歩き回りました。チームで動くことの大切さや役割分担、現地の人々と関わりながらテーマを探していく面白さと難しさなど、さまざまなことを体感することができました。

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テーマの一つだった「歯を治すコインの木」

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「ネパールの人たちと一緒に写真に写る」というテーマをクリアした学生たち

 

最後に

学生たちは様々な場所を訪問してネパールの医療や教育、農業などの分野に関する理解を深めたほか、町の中を歩き店で買い物をするなどといった日常的な行動を通して、ネパールの実情や人々の生活を体験しました。ネパールは停電や断水、ストライキが頻繁に起きますが、それでもたくましく明るく、今あるものに感謝して生活する人々を見て、感じたことがたくさんあったようです。それは、実習後の学生からのレポートからも見て取れました。

今の日本が失ってしまったものが、ネパールにはまだまだ残っています。豊かさとは何か、人間の尊厳とは何か。少しでもよいので今回のネパールでの体験から学び、今後も考え続けてほしいと願います。

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日常生活に触れるため、ローカルバス乗車にもチャレンジ

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お世話になったビレッジステイ先の方々と

報告:小川真以、須原敦

2014/10/08更新


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