2008年、年率2億3000万%以上のインフレが起こっていたジンバブエ。2009年初旬にアメリカドルが通貨として導入され、ジンバブエドルの利用は実質的に終了した。昨年、銀行からお金を引き出すために徹夜で並ぶ人もおり、物の値段は朝、昼、夕方とどんどん高くなっていったとも言われている。昨年何が起こったのか、その場にいなかった私にとっては想像がつかなかった。そこで、どのような生活をしていたか、ある男性にインタビューを行なった。
ADRA Japanスタッフ(以降 石橋)>去年は本当に大変だったみたいだね。
男性>去年は本当に大変な日々だった。紙幣が出回らないんだ。

2万ジンバブエドル札(2008年)これで何が買えたのだろうか。
石橋>紙幣が手に入らないっていうことは、何もできないね。
男性>そうなんだ。銀行からお金を引き出そうとしても、制限がある。例えば僕の給料がアメリカドルで月$1000だったとしたら、銀行からは一日$100ずつしか引き出すことができない。それが次第に一週間$100となり、さらには一ヶ月US$100しか引き出せない制限がでたんだ。
石橋>自分のお金が銀行にあるのに、制限があって、引き出せないなんて!
男性>口座にお金があっても、銀行には渡せる紙幣がないからね。

1億ジンバブエドル札(2008年)
石橋>日本の新聞でも載っていたけど、銀行口座からお金を引き出すのも、人がいっぱい並んで引き出すのに時間がかかったんだよね?
男性>そのとおり。あの時期は働くより銀行に並ぶ時間の方が長かったよ。幸いにもその当時、僕は大学に勤めていた。大学には銀行があってね、そこの銀行の人と仲良くなって他の人より早くお金を引き出すことができたんだ。
石橋>銀行からお金を引き出すのに制限があるなら、どうやって自分が欲しい額の紙幣を手にいれたんだい?
男性>方法はある。
1つめはピザ屋やフライドポテトを売っているファーストフードのレジで、紙幣を持って商品を買おうとしている人を見かけたら、こっちがキャッシュカードで払うから紙幣をくれないか、という交渉をするんだ。そこで紙幣を手に入れる。キャッシュカードは使えるからね。
2つ目は自分の口座にあるお金を何人かの友達の銀行口座に送金する。そして友達のカードを借りてお金を引き出すんだ。それか自分でいくつかの銀行口座を開設して、そこに送金してお金を引き出す。
その後、ジンバブエドルをブラックマーケットに持って行ってジンバブエドルからアメリカドルや南アフリカランド(南アフリカの通貨)に変えるんだ。
当時はとにかく、どのようにしてジンバブエドル紙幣を手に入れて、アメリカドルや南アフリカランドに変えるか…それがあの時のジンバブエの人たちが考えていたことだ。

5億ジンバブエドル札(2008年)このお札1枚でバスにも乗れない…
石橋>キャッシュカードが使えるなら、紙幣を手に入れる必要がないんじゃない?
男性>いや、ジンバブエドルを南アフリカランドかアメリカドルに換えて、ボツワナや南アフリカ、モザンビークの隣国に物を買いに行った方が安い。物価が高くなっても、給料が変わらないから、物を買うなら隣国で買った方が安いんだ。
例えば2リットルの食用油は当時ジンバブエでは約$5〜$8した。でも南アフリカなら$2で買える。こんな感じでほとんどの物がジンバブエの半分以下の値段で売っているんだ。
だからたまにバスを使って国境を越えたもんだよ。でも、それができるのは$200のお金を払ってVisaを手に入れられた限られた人たちだけだ。
石橋>今でもジンバブエドルは使われているの?
男性>今は使われていない。今ジンバブエでよく出回っている最少額紙幣がアメリカの1ドル札だ。バス一回の乗車が50cなんだけど、50cがないんだ。セントや南アフリカランドのコインはあまり出回ってない。そこで$1払ってZ$3,000,000,000,000(3兆ジンバブエドル)をお釣りでもらうんだ。で、次回バスに乗る時にZ$3,000,000,000,000を払うんだ。ジンバブエドルはもう価値がないからバス乗りの人はいちいち紙幣の枚数なんかかぞえていないけどね。

10兆ジンバブエ札(2008年)
もう過去のことだからなのか終始笑いながら話してくれていた。しかし、最後に彼はまじめな顔でこう言った。
男性>自分にはこのサバイバルな状況をしのげるほどの生活の基盤があったからなんとか生きていけたが、ほとんどのジンバブエの人は苦境に立たされた。彼らは生活が苦しくて田舎に帰った。彼らにとっては去年のことはあまり思い出したくない出来事だろう。
話が終わり、この記事を書きながら去年のことを触れたインタビューをしたことを少し後悔した。経済の大打撃を受けたと同時に、コレラの感染も拡大した国で生き抜いてきたジンバブエ人の苦しみは想像を超えている。ADRA Japanは経済をどうこうできるわけではないが、せめて今回の事業でジンバブエの人たちをコレラ感染から予防できればと願うばかりであった。
(2009/07/31更新)
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